銀座にはいい鮨屋が多かったですね。その分、敷居も高かったように思います。その最たるものが三原橋にあった「青柳」です。正確には「御寿司處銀座青柳」といい、一見さんお断りの店だったそうです。
「間違っても一人で来ちゃダメだよ」
と、時々連れていってくれたU課長からクギを刺されたのを憶えています。もちろん後から請求書を送ってもらい交際費で処理するのですが、結構な金額だったようです。
青柳の醤油は自家醸造なんだとご主人から聞いたことがあります。しかも何故か店にミキモトのカレンダーがかかっていて可笑しかったのを憶えています。銀座の飲食店でミキモトのカレンダーがあったのは青柳と、並木通り5丁目の路地奥にあった焼き鳥の「鳥一」の2軒だけでした。まあ普通は自宅に置きますけどね。
自前で行ける鮨屋はランチメニューがあって明朗会計の店に限ります。2丁目の職場に近い順でいえば「初音鮨」と「きかく鮨」です。初音鮨は銀座レンガ通りを4丁目に向かって3丁目の左側にありました。現在のMUJIホテル駐車場の前あたりです。ご主人が陽気な人で、いつも面白いことを言っていました。ただ駄洒落攻撃には辟易しましたが(笑)
きかく鮨は2丁目の三共薬局の横から地下に下りたとこにありました。今はブルガリタワーとか言っていますが、あれは第一三共のビルなのです。店はカウンターだけで10名くらい座れたでしょうか。食べているお客の後ろに椅子が並んでいて、ランチタイムは待ちのお客が座り、夜は手荷物置き場に使われていました。
宣伝部にいた頃、部長のA氏と一緒に行くと11時半過ぎにもかかわらず既にカウンターは満席、同じくらいのお客が待っているという状態でした。
「待つか」ということで運良く空いていた待ち専用の椅子に掛けると、カウンターから
「あがりは?」
との声。
「冷たいの」
とA氏。暑い時期だったので冷たいあがりもいいなと思いながら運ばれてきた湯飲みを見てびっくり。
上が白い……
要するに泡……
泡は茶碗の飲み口のところで切られていて、横から見てもビールを飲んでいるようには見えません。
隠れて飲む昼のビールは本当に美味しかった。
外国人を連れていくときは5丁目の銀座コアB2の玉寿司です。ここには英語のメニューがあるのです。鮨や魚介類そのものの写真やイラストに英語の解説が書いてあるので、大変重宝しました。
ところで鮨の数え方ですが、いつの頃からか一貫=1個になってしまいました。昔は一貫=2個でした。亡くなった野村万之丞も同じことを言っていて、一貫=2個というのは日本の文化に基づいているのだそうです。
つまりふたつでひとつという、「対」の文化なのだとか。夫婦茶碗、男雛と女雛、神社の狛犬、確かにみんな対ですね。
今どきは「マグロ1個」とか頼むのでしょうか。