ニューヨークでワインを飲み過ぎて胃が痛くなりました。これまで二日酔いはあっても胃痛の経験はあまり記憶にありません。やはり時差で疲れていたのでしょうか。
いよいよ食欲がなくなってきたので薬を買いにドラッグストアに出掛けました。あらかじめネットでどんな薬があるのか調べて、Pepcidというのが日本のガスター10と同じ成分なのでそれを買いました。ただし量はガスター10の倍です。フェモチジンという成分なのですが、ガスター10は1錠10㎎、Pepcidは倍の20㎎です。
やはりネットで調べたところ、20㎎は医者の処方なんだそうです。第一、ガスター10も薬剤師から説明を受けなければ買えないのです。
しかもこのPepcid、25錠で税込み15.27ドル。日本円で1,300円くらいです。1錠あたり52円です。
アメリカは現在のところ皆保険制度がなく、多くの余裕のあるアメリカ人は民間保険に入っています。家族プランの保険料は年間1万4千ドル、悠に100万円超えです。
そんな高い保険料を払っていても100%保険適用の保障はありません。保険会社も商売ですから。
医者は松竹梅のコース別治療法を患者に示し、患者は自分の保険内容を考えてコースを選びます。また患者は必ずその場で電話で保険会社に確認します。医者も商売ですから保険がきくようなことを言って高いコースを選ばせるのです。しかし保険会社に確認しても支払時に満額適用されないことはよく起こります。以前はファックスで証拠を残すことも出来ましたが、敵もさるもの、最近では証拠は残さないようにしているようです。従って患者は常に「安く安く」の精神で医者にかかるわけです。
高い保険料を払えない人はうかつに医者にかかれませんから買い薬で治すしかありません。死ぬかも知れないと思った段階で初めて医者にかかります。それも清水の舞台(アメリカにはありませんが)から飛び降りるような気持ちで。どちらも死ぬ思いですが。
またアメリカの医者は処方箋は書きますが薬を販売できません。患者は医者から貰った処方箋を持ってドラッグストアで買わなければなりません。当然その場合も安い店、ジェネリックを探しまくります。そこに薬の価格競争が生まれます。ですから安くてよく効く薬がドラッグストアの棚に並ぶのです。危険は承知の上といったところでしょうか。
よくアメリカ人は体が大きいから成分量が多いと言う人がいますが、実はこうした社会事情によるところが大きいのです。
ところで日本人駐在員の多くは法人契約の日本の保険ですから、保険が下りないということはほとんどありません。さらに保険会社の提携病院にいけばキャッシュレスで済みますが、多くの提携病院は大都市の真ん中にあり、休むほど具合が悪い場合は自宅の近所の医者にかかります。家族ならなおさらです。そうなると本人が立て替え払いをして、領収書をまとめて保険会社に提出しなければなりません。立て替え払いも下手をすると100万円を超えることもあります。早く取り戻したい一心で仕事そっちのけで必死で領収書のとりまとめに励むわけです。はたで見ていると滑稽ですが、本人にとっては一大事なのです。
そういえば医者も保険にかかっているそうです。以前アメリカの病院で働いていた心臓外科医に聞いたのですが、掛け捨ての保険で年間5千万円くらい払っていたそうです。これは訴訟対策だそうです。掛け捨て5千万円払っても大きな収入が得られるということは、医療費は推して知るべしです。
安くて凄くよく効く薬がドラッグストアに並ぶのは当然です。